今年の秋に公開予定の映画の原作本を紹介します!
川っぺりムコリッタ / 萩上直子
今回は、2021年に講談社より出版されました萩上直子 著「川っぺりムコリッタ」という小説を紹介します。
作者の「萩上直子」は、映画監督・脚本家としても活動しており、「バーバー吉野」でベルリン映画祭自動映画部門特別賞を受賞、「彼らが本気で編むときは、」でベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞を受賞しています。
また他の作品としては、映画に「恋は五・七・五!」「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」「レンタネコ」、著書に「モリオ」があります。
「かもめ食堂」は有名ですね、全体的にほっこりするような気持ちが暖かくなるような映画を作る監督さんですね
- 2022年冬に公開予定の映画「川っぺりムコリッタ」の概要
- 「川っぺりムコリッタ」のあらすじ、本を読んだ感想
2022年9月に公開決定!出演は松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆
今回紹介する「川っぺりムコリッタ」ですが、2022年の9月に映画が公開される予定です。
- 出演:松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、江口のりこ、柄本佑、田中美佐子、緒形直人
- 原作・監督・脚本 : 荻上直子
- 音楽:パスカルズ
出演者は、主人公の山田役に松山ケンイチ、そして隣に住む住人である島田役にムロツヨシ、ムコリッタの管理人の南役に満島ひかり、そして上の住人である溝口役に吉岡秀隆が決定しています。
また監督・脚本は原作の荻上直子が務めます。
またツイッターで映画「川っぺりムコリッタ」の公式アカウントも公開されています。
原作と監督が同じ方ですので、原作のイメージに近い方が映画の配役としてキャスティングされているような印象を受けました。今から映画も楽しみです!
「川っぺりムコリッタ」のあらすじ
これから映画を見る方や本を読まれる方のために、ネタバレなしで冒頭のストーリーだけお伝えしますね
主人公「山田」は、高校生の時に実の母親から「あんたとはこれで終わりだよ」と2万円を渡され、実の母親に親子の縁を切られます。
父親は物心つく前に蒸発し、どこで暮らしているかも、ましてや生きているかも分かりません。
元々ネグレクトの母親に育てられた山田は、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていました。
そしてその後、知り合いの家を点々とし、日雇い労働をしたり、時には万引きを繰り返して捕まったりとギリギリの生活を保っていました。
ある日知り合いからオレオレ詐欺の受け子のアルバイトを紹介されます。
そして山田は受け子をしている時に警察に捕まり2年の実刑を受けます。
それから刑務所で30歳の誕生日を迎え、2年の刑期を終え出所後、全く土地勘のなく、海と川が側にある場所を求めて、とある海沿いの街に移り住みます。
職場は「イカの塩辛」を作っている食品加工の会社で、そこでイカを捌くアルバイトとして雇ってもらいます。
そして職場の社長に、川のそばにある住まいを紹介してもらいます。
建物の名前は「ハイツムコリッタ」、古い建物ですが管理人がいてよく手入れのされているアパートでした。
管理人さんは若い女性で、名前は「南さん」
夫をガンで亡くし、娘と2人で管理人の仕事をしながらアパートに暮らしていました。
そして、アパートで晩御飯を食べていると、隣の部屋に住む男が突然「部屋の風呂が壊れたから風呂を貸して」と尋ねてきます。
山田は気味が悪く断りますが、次の日その隣の住人から畑で取れた野菜をおそそわけされます。
それ以来、山田は休みの日になると畑仕事を手伝うようになり、晩御飯になると隣の住人が山田の部屋を訪れて勝手に晩御飯を食べるようになります。
「ご飯ってさ、一人で食べるより、やっぱり誰かと食べた方が美味しいよね」
その隣の住人の名前は「島田さん」
図々しいのが取り柄ですが、どこか憎めないようなそんな人です。
そして、山田の真上の部屋に住む「溝口親子」
この親子は、いつもクタクタのスーツを着ていて、父親は墓石のセールスマンをやっており、息子は失言症か言葉をしゃべりません。
平日は塩辛の工場でイカを捌く仕事をして、仕事が終われば夕食時に必ず部屋に来る島田と一緒にご飯を食べたり、休日に畑仕事を手伝ったりといった日常を過ごすようになります。
今まで、ひとりぼっちで生きてきた山田ですが、少しずつハイツムコリッタの人たちとの交流をし、戸惑いながらもそこでの暮らしに少しづつ馴染んできます。
そんなある日、生まれ育った街の隣の役所からある通知書が届きます。
それは行方不明だった父親が部屋で一人で死んでいるところが見つかり、遺体を焼却したがお骨の引き取り手がいないので、親族に引き取って欲しいというものでした。
山田はそこで初めて、父親が死んだこと、そして父親が隣町に一人で暮らしていたことを知ります。
「川っぺりムコリッタ」を読んだ感想
読んでいて最初に、これって「めぞん一刻」っぽいなぁと思いました。
主人公の山田は五代さんとして、管理人の南さんは若い女性で未亡人なので響子さんというところでしょうか。
そして、隣の部屋の住人島田さんの勝手に山田の部屋に上がり込んできて、お風呂に入ったり、ご飯を食べたりするといった図々しいところは四谷さん。
2階の溝口親子は一ノ瀬さん親子というところでしょうか。
作者が意識したかは分かりませんが、世代的にそうかなと思いました。
主人公の山田は、母親がネグレクトで、家族愛とは全く無縁の人生を送ってきました。
そして高校生の時に母親に捨てられ、その後犯罪を重ねてオレオレ詐欺の受け子で実刑を受けて刑務所で2年ほど過ごすことになります。
山田は30歳を過ぎるまで一人ぼっちで生きてきました。
ですが、出所後に山田のことを全く知らない土地で(少し変わった人たちですが)アパートの中で交流が生まれます。
自分はいつ死んでもいいと思っていた山田ですが、生きていてもいいんじゃないかと少しづつですが考え方を変えるようになります。
ムコリッタの人々との触れ合いを通じて、今まで経験出来なかった生きる喜びを1から学んだように感じました。
そして、父親の死を通じて今まで知らなかった父親の存在を知ります。
最初は本当に父親なのかもわからず戸惑っていましたが、役所の人に父の生活ぶりや死んだ時の状態を聞き、父親であることを確信します。
そして、最後に改めてムコリッタの人たちと一緒に、父親のお葬式をします。
父親のお葬式をすることで、両親とのお別れ、そして今までの自分自身とのお別れをしているような
山田自身の中で、今までの人生の区切りをつけるためのお葬式という風に感じ、すごく前向きで応援したくなるような気持ちになりました。
本の内容も素晴らしかったですが、映画のキャストを見て、作品のイメージに近いなと感じましたし、映画も非常に楽しみになりました。