以前本屋で見かけてからずっと気になってたのですが、読んでみて面白かったので紹介したいと思います。
52ヘルツのクジラたち / 町田そのこ
こちら、中央公論新社から出版されました、町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」という本です。
ちなみにこちら2021年本屋大賞を受賞した本となります。
- 本屋大賞とは何か、歴代の受賞者などを解説
- 「52ヘルツのクジラたち」のあらすじ、本を読んだ感想
本屋大賞とは何か
本屋大賞ってよく聞くんですけど、どんな賞なんですかね
そもそも本屋大賞を知らない人のために、まずはこの賞から説明しますね。
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票だけで選ばれる賞です。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。
本屋大賞とは【賞の概要】
普通の文学賞、例えば直木賞でも芥川賞でもいいのですが、基本的に著名な作家が選考委員として賞を決めます。
ただ、これって書き手のプロの目線で選考しているのですが、実際に本を読むのはプロではなくて素人。
なので、書き手目線ではなくてあくまで読み手目線での賞を作ろうと、本屋さんの店員さんがおすすめする本というコンセプトで作られた賞です。
なんですが、この賞の受賞作って毎回すごく面白い作品ばかりなんです。
例えば過去の受賞作を挙げると
- 『博士の愛した数式』小川 洋子
- 『夜のピクニック』恩田 陸
- 『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー
- 『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎
- 『告白』湊かなえ
- 『天地明察』冲方丁
- 『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉
- 『海賊とよばれた男』百田尚樹
- 『村上海賊の娘』和田竜
- 『蜜蜂と遠雷』恩田陸
- 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
- 『流浪の月』凪良ゆう
など、選ばれた時々で話題になった本ばかりで、さすが本屋の店員さんが選んだだけあって読みやすくて面白い本ばかりなんです。
ちなみに脱線しますが「伊坂幸太郎って直木賞ノミネートされないよね」って思われている方いらっしゃるかもしれませんが、伊坂幸太郎は一生直木賞にノミネートされません。
というのも当の本人が拒否しているから。
というかそんな人いるんですね。
昔、何回か直木賞にノミネートされたのですが、受賞には至らず。
その際に、お偉い先輩作家からの受賞を逃した理由に納得がいかず、今後自分は直木賞をノミネートされても受けませんと言い放ったそうで、以来直木賞から出禁をくらってる感じです。
ちなみに、「半落ち」の横山秀夫も確か似たような理由で断ってたと思います。
まあ直木賞の話はここまでとして
要するに、本屋大賞は読み手目線で選ばれる非常に面白い本が多い賞です。
映画化はされるのか
そして本屋大賞の受賞作といえば、ほぼ全ての作品が映画化もしくは映像化されています。
ですので本作品も「映画化されるのでは」と言われていて
正式なアナウンスはないですが、もしかしたら2023年頃に映画化されるのではと噂されています。
もし映画化されるのならキャストは誰なんでしょうね、あと映像も美しい作品になりそうなので映画化されるのが楽しみですね
本のあらすじ
あんまり詳しく話すとネタバレになるから冒頭のみ概要レベルでざっくり書きます
物語は大分のとある浜辺の街に移り住んできた女性が、母親の生家をリフォームして一人で住むところから始まります。
ただこの女性、田舎に移り住んでも仕事もせずに毎日を過ごしているため、近所のご老人(田舎町なので若者があまりおらず近所に住んでいる方々はお年を召された方が多い)からなぜか「あの女性は、東京で怪しい仕事をしていてこっちに逃げてきた」と噂されます。
なので近所の人たちとは距離をおいて暮らしていると、ある日とある男の子と出会います。
その男の子は髪が長く痩せ細っていたので最初女の子と勘違いしたんですが、どうも様子がおかしい。
と言うのも、毎日同じ服を着ていて、服をめくると体にアザがある、その子の近くによればお風呂に入っていないのかツンとした臭いがする。
そして言葉が喋れない。
喋らないのではなく喋れない。
不審に思ったその女性は、その子を親に帰すとまずいと考えて、なぜか男の子と一緒に暮らすことを決めます。
ただ、なぜこの女性はこの男の子を助けようと思ったのか。
それは彼女自身の生い立ちに理由がありました。
そして、彼女自身の生い立ちやなぜこの田舎町に住むようになったかの理由が、物語が進むに連れて徐々に明らかになっていきます。
本を読んだ感想
この本はとても切ない本だと思いました。
幼少期に愛されること、人に必要とされることを知らずに生きてきた主人公。
そして、愛されることを知らないがゆえに、今度は自分が愛する人を間違い、その後の人生に大きな後悔を生みます。
本当に愛してくれている人をきちんと愛する方法を知らない、なぜなら愛情を知らないから。
他人からの愛情がわからない、なぜなら人から愛情をもらったことがないから。
愛情を知らない女性が、ただ人生を前向きに生きたいだけなのに、それすらさせて貰えない悲しさがこの本にはありました。
本の冒頭で「アンさん」と言う人が出てきます。
アンさんならこう言うだろうな、アンさんだったら笑うだろうな、でもアンさんはもう居ない。
主人公にとっては大切な人物だと言うのが冒頭の描写でわかります。
そして物語の中盤以降にアンさんのエピソードが出てくるのですが、このアンさんの話が壮絶すぎて読むのが辛くなりました。
アンさんは主人公のことが本当に好きだったんだな、主人公もアンさんのことが好きだったんだな。
誰も悪くない、ただ愛情がボタンの掛け違いみたいにすれ違ってしまった。
そして全てを失い、最果ての地で一人の少年に出会った。
この子もかつての私のように、愛情を知らない。
彼の心は叫んでいる、だけど誰も聞こえない。
ただ、私はその叫び声は聞こえる、うんうん一人じゃないから大丈夫だよ。
恐らく彼が過去の自分に見えたんじゃないかなって思いました。
私が救い出さないと、だって声が聞こえるから。
人は不器用で上手に生きていくのが大変です。
でもそんな中で誰かが心の中で叫んでいたら、手を差し伸べてあげたい、救ってあげたい。
私は愛情を知らない、だからあなたの欲しい愛情を与えられないかもしれない。
でもこんな私だけど、あなたを愛しているのは本当だよ、不器用でごめんね。
この本を読んで、主人公がそんな風に言っているように感じました。